UnrealEngine4研究所

UnrealEngine4の研究/開発をしてます。ガルルソフトウェア研究所です。

2015年11月

社長業ってなんだろう

社長業をどのように表現していいかわからないが、とにかく管理職っていうのは忙しかった。

まったくもって自分の研究とか、作業ができない職種で特別な仕事を持たずに管理するだけだから、あいてる時間は

どこかにあるだろう、という錯覚に陥ってしまいがち。


本当に今、目の前が忙しいのに、明日になれば落ち着いているはず、「なにしろ今は突発事項を片付けてるんだからね!」という理由に明日を見て毎日忙しい職種だった。


きっとうまくやる人ほど時間はうまく使えるのでしょう。毎日でてくる突発事項に追われて結局毎日忙しい。人数が増えれば増えるほど突発事項は起こる。


つまらない例から重篤な問題まで大小様々織り交ぜてたくさんある、PCが壊れた、HDDの空き容量が少ない、グラボの性能が悪い、誰々くんが来ない工数が足りない、お客さんが初めと違うことを言い出した、プログラムのここがわからない、病気になった、この書類は誰に出せばいいんですか、この会社のルールはどちらが正しいんですか、仕様が決まらない、スケジュールをはみ出してる、月末になったのに入金がないなど。


ここに自分の作品作りにこだわりがでてくるともっと面倒になる。

面白いところや綺麗なところ、簡単に言うと自分の趣味と異なるゲーム開発を察知してしまった場合は、なぜそうなったか話を聞くところと自身の希望を説明することと、そうすると工数が足りなくなること、なんで最初に質問してくれないんだ、どうして最初に言ってくれなかったんですか、というやりとりから、落とし所を見つける作業に半日は費やす。


もちろん、よくデキる人にこんな間違いはないのかもしれないが、僕にはあった。


そもそも大会社じゃないから、人数10人ほどで始めたこの会社に稼げる要素や仕組みなど用意されているわけじゃなかった。役割を持った各担当がそれぞれの仕事をする。というよりは、僕が作ってソフトを納品する、といういつもやってきた開発を、みんなに手伝ってもらって、もっと大きなものを作る、とか、もっとたくさん作る、とかそういう仕事の仕方になる。


何しろワンマン経営である、他の人の話を聞いて失敗した時に責任を取らなくてはならないのは自分だ。自分の趣味と違うゲームのあり方を認めるべきか、そうでないかは実は悩む余地はない。「なんで他人の失敗で、自分がお金を浪費せねばならないのか?」をかんがえると、その責任転嫁に意味がないことはわかるはずだ。人の意見を聞いて失敗するよりも自分で決めたやり方で失敗した時の方が納得がいくのである。


だから仕事の仕方としても、僕の知ってること以上には危険予測ができないし、僕の知るお金の管理なんていうのは家計を垣間見て知りうる程度の知識しかなく、「経営する」なんていうよくわからない言葉に飲み込まれている暇もなかった。ただ単純に、毎月給与として払うために必要なお金を外から集めてくる。お金を集めるために1ヶ月前にゲームを完成させる。ゲームを完成させきる前に次の仕事の目処をつける、これが一連のサイクルとなる。1つ歯車が狂ってもショートしてしまう、いわゆる自転車操業で、それゆえわかりやすい。


でもこのような僕の知りうる知識で仕事を回していくと、僕の知りうる大きさでしか会社は大きくなれない。自分の感性が腐っている自覚があるなら、さっさと信用できる開発者を横に付けるべきなのでしょうし、金勘定ができる自信がなければ会計士を横に付けるべきで、どうあれ「何かが足りない」状況だと、お金で解決するか、縁をたどるしかなく、ほっておくと自分の首が締まる。



そうこうしているうちに5年が過ぎ、なぜか職を失って、ふと手を見てみると自家製C++ライブラリとWindows環境しか残ってなかった。あれ?世の中はスマホだとか、C#も見ておけとか、Unityだとかアンリアルだとか自分で言ってたのに?あれ?なんでそうやってきた僕は何も持ちあわせていないんだろう???再就職するにも、「Cだけできます」では今の状況についていけるはずがない。


「これからどうしよう」というのと「次は何しようかな」という気持ちが交互に現れてくる。元来僕は勉強は全くできなかった。子供の頃はとにかくプログラムが面白くて楽しくて、授業のノートには家に帰ったら打ち込むべきプログラムの設計やコードばかり落書きしていた。そんな僕が「ハナをつまみながら」仕事をしてもうまくいくわけがないので、今更お金を稼ぎに行くだけの仕事をしても、きっと学生時代の時のような落ちこぼれになるだけなのが想像に難くない。


だから僕が参考にすべきは、好きなことだけを追いかけてきた結果「与えること」を先にすれば、後から、ゲームも人もお金も付いてきたという事実である、事実に基づいて、また与えられる「何か」を作り出すことで「将来」に結びつくのであれば。

学生時代のプログラムと数学や物理も結びついてくれれば、きっともう少し成績は良くなったかもしれない。

開発者のお値段

一般的にゲームを作るとなると、小さいアプリで500万~、中規模で1500万円、大きいのは大きさによるので、一概にこれくらいとは言えないのだけれども、クジラソフトでは最も大きいもので総額3000万円くらいの規模だった。開発では500万円もらえれば人月単価60万円の開発者を約8ヶ月使用可能である。どんな人材がどんな値段で存在するのだろうか。見てみよう。





【一般】

まず【一般】として自社の社員や、他の会社さんから人材を貸し借りする場合の費用。相場は人月単価が60万円程度。スキルにもよるが知り合いの会社から空いている人を借りてくるイメージ。会社同士の付き合いと信用が必要。


プログラマー

・メインプログラマー(時価)

・一般プログラマー 60万円


出向ベース労働時間に(事実上)縛りなし


■グラフィッカー

・グラフィッカー2D専門  45~60万円

・グラフィッカー3D専門  50~60万円

・グラフィッカー(2D/3D)45~60万円



プランナー

・プランナー(データ作成) 30~60万円

・プランナー(仕様書策定) 45~60万円

・プランナー(自由な企画書)0万円~


※その他の人材としてデバッグを行うチェッカーさんがいたり、管理職もなくはない。しかし自社のお金を司る役目や、開発の工程を見守るのによっぽど名の売れた人材かそういう経歴を持った人でない限り外注として採用される例は少ない。「もともとその会社の人で独立した人」など信用関係による。


・プロデューサー 60万円~(あまり聞かない)

・ディレクター  60万円~(あまり聞かない)

・チェッカー(デバッグ会社)(35万円~)

 ※1人、1日16000円程度



【フリー枠】

次に【フリー枠】として紹介。以前付き合いのあった人や、会社を辞めて一人で仕事をしている人などを雇用する場合。経費がかからないので、各種保険を加味したサラリーマンの総支給+αといったところでざっくり言うと30万円程度が相場。


・フリープログラマー    (35~45万円)

・フリーグラフィッカー2D (25~45万円)

・フリープランナー     (25~45万円)

・チェッカー(アルバイト) (15万円~)



【インターン枠】

その他【インターン枠】専門学校と付き合いがあれば就職間近になった学生の職場体験として1ヶ月程度の労働力を「無料」で借り受けることができる。ただし、技量も経験もそれなりに「ない」ので「きちんと教えてあげられない」のであれば、お互いに辛いことになる。予算がカツカツの現場では貴重な労働力となっている。クジラでは定時を超える作業については、時間延長分をアルバイト代で換算することにしていた。


・プログラマー(インターン) 0万円+交通費

・グラフィッカー(インターン)0万円+交通費

・プランナー(インターン)  0万円+交通費

・チェッカー(インターン)  0万円+交通費



どうだろうか。ざっくりと紹介してこれくらいの予算感である、この他にも人材派遣や、人材紹介を利用するといった方法もある。自分の給与と比べてみて、ウサインソフトのような乱暴な値段付けがされていないだろうか、よく考えてみてほしい。気をつけなくてはいけないのは「相場は60万円だけど俺の給与は30万円を切っている、ひどい!」という勘違いだ。私の知っている範囲で言えば給与の平均は25~35万である。人月単価と給与は違う。注意されたし。

iOS版 ソーサリアン その2

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急にゲームの話がしたくなったのでゲーム開発と関係ない話を書いちゃう。


意気込みとしては入院生活も半分くらいをすぎたころに、レベル1シナリオの「消えた王様の杖」「暗き沼の魔法使い」「天の神々たち」の3つをクリアした。懐かしかったし、操作にも慣れてきた、これなら課金してでも最後までプレイしてみても面白いかもね。と思いつつ、レベル2の「タリスマン」にチャレンジ。


しかし敵にやられるわけではないけど、次々にトラップにかかり、石化したり、動けなくなって、最後のバイタリティの一番少ない魔法使いが扉を開けられなくなって積んだ。街に帰って復活を試みたけれどもどれも失敗。しょうがないのでアエリアさんの用意した課金コンテンツにお布施してみようと覗いてみたら120円だった。1キャラ120円で3キャラ蘇生させたら360円。

360円。。。。

この先のことは知っている。クラーケンに刺されたり、ドラゴンに雷を落とされたり、氷結したり様々なトラップにはまりまくるゲームなのだ。これからの扉を開けるたびに120円のリスクを背負ってゲームするのは正直つらいと感じた。


また、ボスも急に強い奴に当たると120円のリスクがあるので、倒さなくていいボスは倒さずに進もう、といった消極的なプレイを余儀なくされる。今120円だして、このゲームにハマるよりは、持っているソーサリアンオリジナルをもう一度ノートPCでやろう。。まだ3つしかクリアしてないし。。。。そう思った。


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自分で以降ゲームを作るときに今の感覚を参考にしよう。


・ソーサリアンとしては十分に楽しめたので、もっと楽しみたかった
・しかし課金コンテンツの価格とのバランスに納得できなかった
 ※120円で「1体だけ復活」は高すぎた
 ※120円で10体まで蘇生させてくれるとか、360円で無限に蘇生させてくれるなら課金した
 ※HEALとかNOILATEMアイテムなど「死ににくくする」アイテムが120円なら買ってた
・ソーサリアンは知っている。だからこそ今の課金ペースだと、この先に楽しくなくなることを想像できた
・ゲームオーバーになりながらなんどもキャラクタを作る時間は今はもうない
・120円はこれからの扉を開ける、ボスを倒す、というチャレンジの意欲を消沈させる
・携帯版だけのソーシャル要素とかプラスアルファがほしかった


特にソーシャル要素については2010年だというのにソーサリアンを通じてあらたにフレンドを作ることができる画期的なチャンスだった。ソーシャルにびびっている僕らおっさんに「蘇生」じゃなくて「新しいソーサリアン友達を提供」してくれていれば「蘇生」の120円も惜しくない。

120円ごときでビビるよりも居酒屋でくだを巻きながらソーサリアンを語れる時間をかう、今遊ぶレトロゲーっていうのはそういうものなのではないか、と感じた。



ガンハウンドをつくろう!4

さて、プログラムは自分一人でなんとかなりそうなんだけど、グラフィックに関しては、どうにもならない。これは他人のパワーが必要である。僕の知っている腕のいいグラフィッカーはガンヴァルケンでお世話になった(パッケージ絵を無償で描いてくれた)「HOE」さんにパッケージデザインを10万円でお願いした。作業してもらっていうのもおこがましいが、ガンヴァルケンで無償でお世話になった職人さんには、なんとかお礼ができるところをお金で気持ちを返したかった。しかしとても満足のいく金額は提示できなかったけれども快く引き受けてくださった。さらに敵キャラ周りのスプライト関連も全部「HOE」さんが引き取ってくれたことを考えると、最終的にスプライトまでリファインして描いてくれたHOEさんには恩をあだで返す金額だったかもしれない。

背景に関しては、3つある各レイヤーをグーグルの画像検索で構成したものをメモリに収まりきる程度にマップチップ化して、それを九州のグラフィック会社に「リファイン」という名目で60万円でお願いできた。全5ステージを1人月の予算でリファインしてくれたんだから格安だったと思う。その範囲に収まる程度にそれなりにきっちり必要な要素を盛り込んでおく必要はあるが、本当によくやってくれたと思って非常に感謝している。

こうして出来上がったガンハウンドは、全然面白くなかった。いつの開発現場でもそうだけど、調整ができてないゲームに今後の期待はできるがα版やβ版っていうのは、例外はあれどもあんまり面白くない、当初の面白そうな企画がから滑りしている感じがある。ガンハウンドも例外ではなかった。しかしここからである。磨き方はさっきも言ったように、どこが面白くないかを真正面から受け取り、それをどのようにすれば面白くなるか「試行錯誤」することである、考えているだけでは面白くするのは難しい、やってみないとプログラマがそれを面白いと思っていないと面白くすることはできないのである。つまり何度もなんども遊ぶことである。何度も遊んでユーザーが感じる不満をいち早く察して手直しし続けることが「磨く」ことに他ならない。一人で開発するのではなく、チームで開発するからこそ、より一般的な意見を聞き入れて多くの人に受け入れてもらえる内容にすることができる、一人でやるのは難しい。ガンハウンドでは実質一人で開発を進めたこともあり、一般的なプレイヤーが期待することをうまく捉えきれていなかった。石橋くんがいれば、彼の嗅覚があれば、きっと気づけていたことも僕には気付けなかったことがいっぱいあった。

ガンハウンドをつくろう!3

アジャイルという開発手法をできるだけ簡単に説明すると、「小さい完成形を何度も作り上げながら大きな完成に持って行く」と説明できる。

うまく理解してもらうためにアジャイルと真逆の開発手法(昔ながらの)「ウォーターフォール型」を紹介する。ウォーターフォールは最初に全設計を行い、何にどのくらいの時間がかかるか計算し、綿密な開発工程の設計と見積もりを行い「よーいどん!」で一斉に開発にかかるアレである。さながら滝が上から下に落ちるように大規模になればなるほど滝の横幅は広がる。そしてウォーターフォールの場合はその名の通り上から下に落ちる滝の如し開発手法なので、設計にミスがあった時に上に登って修正しにくい。巻き戻ることで、設計そのものを見直す必要が出てくる。だから最初に全てを見通して作るビジネス系の開発手法としては歴史のある開発手法だが、これをそのままゲーム開発にあてがうプロジェクトも未だに非常に多い。しかし、このやり方は僕には難しい。こう言ってはなんだけど、小学校4年生からひたすらゲームばっかり作っていた僕でも、VIIの経験があっても今回のガンハウンド開発に必要な機能を正確に全部洗い出すなんてことはできない。なぜならシナリオやらステージの構成などの仕様や企画はこれから作るんだからね。しかもそれが面白いのかどうかも遊んでみないとわからない。ましてや1つ1つにかかる工程をできるだけ小さく見積もることも精度に欠けるし、その見積もりに何の保証もできない。

考えてもみてほしい、今、目の前にある企画がプレイしたことも、過去に似たようなものもない新しいゲームだったとして、どうしてそれがやってもみずに面白いかどうかわかるだろうか?企画を見ればわかるかな?仕様を見ればわかるかな?残念ながら企画や仕様も作るプログラマによってその面白さは変わる。

例えばPS2のヴァルケンはひどい出来だったけれども、あれはSFCヴァルケンの仕様と全く違うものができたのであろうか。いやきっとほとんど仕様書通りである。元になったSFC版の仕様とほとんど何もかわらない。ではなぜSFC版が面白くて、PS2版が面白くないのか?これはもう味付けをした料理人の腕が違うとしか言いようがない。SFC版はプログラマとそれを評価して進めたチームのゲームに対する愛情とセンスが良かったから同じ仕様でも面白いものができた。少なくとも自分の半生をヴァルケン捧げる男が出てくるくらいには面白かった。PS2版はそれを作ったチームの腕とそれを管理するもののセンスが悪かった(※1)それだけの違いでしかない。SFC版の企画書に動く速度や弾丸の発射タイミングや敵の動き方の正確なアルゴリズムが書いてあるのだろうか、いやきっとない。そんなのはプログラマの味付け方でどうとでもなる。そうやってプランナーのアイデアを試行錯誤した結果がSFC版の敵の挙動であるはずだ。仕様書にはそんな細かいことまで書ききれないし、やってみないとわからない。

※1・・・PS2版の技術力

余談だが、PS2版の主人公を含めキャラクタはみんな馬面だ。縦に長い。よく似ているのだが馬面なのである。なんでわざわざ馬面にしたのか??これは画面のアスペクト比と言われるものが影響している。SFCでは正方形に描いた画像はテレビの1ドットがやや横長のせいで、少しデブに表示される。だから多少縦長に作った画像を表示することで本来の画像に近い縦横比になるのだが、このアスペクト比を知らないでPS版にSFCの画像を表示すると縦長の画像が縦長のまま表示される。だから、「なんか縦長だなぁ」と思っても元データと寸分の狂いのないものを表示しているので「何もおかしくないですよ?」って言っちゃう素人プログラマと「それなら仕方ない」と容認してしまうディレクターによりできた馬面なのだと推測する。そんな時、アジャイルなら、実データと馬面になっている画面を比較して早い段階で「調査」というフェーズを差し込むことができる。その代わり何かをオミットしなくてはならないが、それはさっき言った70%の背景になるかもしれないし、つまらないBGMに費やす予算をバッサリ削って、元のゲームから収録したSFCサウンドで代用することになるかもしれない、そっちの方が嬉しかったが。

話を戻すと、
だからウォーターフォールにおける見積もり時間にあまり意味はない。「これぐらいあれば確実にできるだろう」という開発時間に余裕を持たす(※3)ことで実際にかかる時間の2倍くらいを計上しておいて定時に帰る、石橋くんがナウローデイングで見せたアレだ。定時にあがれるくらいの仕事量に抑えることで、少々の見積もりにアラが出ても吸収して確実に終わらせることのできる方法である。大規模な開発とそれに耐えうる予算があれば「確実にできる」が「面白くなるかどうか」は別だ。もちろんウォーターフォールでも「面白くする」時間をきっちり組み込んでおけば問題ないが、そんな時間はどれくらいやれば十分なのか、これはもうその時にならないとわからないはずだ。

※3・・・開発時間に余裕を持たす・・・バッファと呼ばれる

しかし自分の会社で開発をするのに、自分のスケジュールにバッファを積むというのは、自分のお金を必要以上消費することに他ならなくて実にバカらしい。増やしたバッファに苦しむのは自分だ。そこでアジャイルなら、そもそも設計にはミスがあることを前提に設計ができる、小さなビルドを一定期間ごとに作っていく。ウォーターフォールなら大きく分けてアルファ、ベータ、マスターといった3段階くらいのマイルストーンがあるが、アジャイルでは長くとも2週間おきに提出タイミングを迎えるようにスケジューリングする、この小さな提出単位を「イテレーション」と呼ぶ。イテレーション単位で評価をしてその度に方向転換を行う。実はゲームはこっちの開発手法と実に相性がいい。

最初の2週間は「タイトルと、マップを歩く自機を用意して特定の位置まで歩いたらエンディングを流す」までを最初のイテレーションとする。次の2週間では「敵をおいて倒せればエンディングに行けるように改造する」次の2週間では「背景をつけてみてボスを出してみる」その次の2週間では「BGMをつけてボスを演出してみる」こんなあんばいである。そうこうしているうちに半年が過ぎて残り3ヶ月になったとしても、きっと半年後には品質に問題はあるが、タイトルからエンディングまで行ける「製品」にはなっているだろう。あとはこれを売れる「商品」にするために、出来上がっているものを調整する時間をどこまで行うか?にかかっている。

過去にアドベンチャーゲームを散々作ってきた経緯から学んだことだけど、「どんなクソゲーも磨けば光る」また同時に「どんなに優れた企画も磨かなければ光らない」これは本当にそうなのだ。プランナーの持ってきたシナリオをただ垂れ流すスクリプトで構成されたアドベンチャーゲームっていうのはびっくりするほどつまらない。そのシナリオを盛り上げるエフェクトだったり「BGM」であったり「効果音」であったり「間」であったりっていう演出が光ってこそそのシナリオは盛り上がる。シナリオライターの頭の中で流れている映画のような1シーンをどれだけ演出するかによって、ゲームの出来具合は大きく変わる。しかし、シナリオライターが頭の中でとても貧弱なイメージしか持っていない場合もある。悲しい時にはクライマックスで使われる派手なBGMをバンバン鳴らし、小ネタで受けただけなのにポップなBGMをこれ見よがしに切り替える。正直背筋が寒くなるような貧弱なディレクターというかシナリオライターというか監督気取りの人に当たる場合もある。その場合には、周りでそのゲームを一緒に作っているメンバーが面白くないところを面白くなるように(どこが面白くないのか、を率直に伝え)フォローしながら、面白くなるように試行錯誤を重ねる必要がある。どんな仕様であれ、それを実装するのはプログラマーである。工程の最末端であるゲームプログラマーの最も辛いけど、最も面白いところはここだと思う。


ガンハウンドをつくろう!2

ガンハウンドには機種に依存した部分が殆ど無く、テクスチャつきの3角形さえ毎フレーム2000個位描画できれば、どんなプラットフォームでも理論上は動く仕組みだった。グラフィックの背景はグーグルの画像検索で得た画像を組み合わせて横に長いBMPを作った。それを16x16のマップチップに分解 するツールを作ってできるだけ小さいテクスチャに区切った。敵キャラは自分で描いたものや検索で拾ってきたものに手足をつけてテクスチャ化しアニメをつけ て動かした。全てが仮の素材だったが、テクスチャ中のスプライト位置も決定していて、アニメのさせ方もレイヤー構成も決まっていたので、あとはこれを「リ ファイン」してくれるグラフィッカーを探した。やりたいことは画面で見せられるし、描いてもらいたいものの方向性も決まっている、出現する場所もスクリー ンショットで構成し、グラフィッカーにその素材の使われ方を意識してもらうことでMOD的な感覚で作業をしてもらえることに期待した。こうすることで敵 キャラの仕組みを考える時間を減らしているのが強みだ。これはVIIを作っていたことで得た知恵で、かつ最も効率の良かったやり方だった。「最初に素材あ りき」でプログラムに組み込むとなると後から設計をしなくてはならなくなるし、その設計も一貫性に乏しくなる(※)

※ ドラえもんの道具に「続きスプレー」というのがある。それを想像してもらいたい。船の舳先を書いてスプレーすれば続きを描いてくれるスプレーなのだが、最 初に書く船の舳先がヘボければ続きスプレーで出来上がる船全体の絵もしょぼい。しかし最初の舳先を丁寧に設計すれば出来上がりの船は素晴らしいものにな る。なので多少面倒ではあるが、少人数で作る時はプログラム主導で必要な素材を「仮素材」としてできるだけ精度の高いものを用意し、それをCG、サウン ド、スクリプトに至るまで用意してあげることで、意図が伝わりやすく作業者もMOD感覚で作業できる。作業効率が高まれば2ヶ月かかるところが1ヶ月で済 む。120万円かかるところが60万円ですむということになる。

ただし、この方法には落とし穴がある。グラ フィックに長けた者が考える表現手法と、プログラマが考える表現手法では最終的な出来上がりに大きな差ができるのである。つまり、プログラマが考えるグラ フィック表現なんていうものは長年の知識を溜め込んできたグラフィッカには最終的にはかなわない。そうなると最も無駄を省くにはグラフィッカが最初から設 計をした方がいいようにも思えるが、グラフィッカはプログラムへの配慮の仕方がわからないので、超巨大なデータを作ってきて最終的にメモリに乗りきらない リスクもあり得る。そうなるともう取り返しがつかない。

そこでいい方法がある。プログラマが自分で作る仮素材をリファイン してもらうまでの工程を全工程として捉えずに70%の作業工程として考えることにする。つまり用意した素材をリファインしてもらって出来上がっても70点 なのである。そこから何もしなくても70点の出来であれば出荷可能だ。全部を100点にする必要があるかないかは予算によるが、1箇所でも60点を下回っ たらそれは落第としよう。そうすれば少なくとも60点以上のものは出来上がる。背景に関しては70%を現実的ラインとして構成し時間が足りるのであれば、 残りの30%をグラフィッカの要望に対応する時間としてギリギリまで品質を上げることに費やすこともできる。そのために基本システムに手を入れることも必 要になるかもしれない。手を入れることで基本システムが破綻してしまうこともあるかもしれない。しかし元々合格点である60点以上のリファインはすでに終 わっているのであるから、仮にシステム改造に失敗したとしてもその品質向上の30%分は捨てることでいつでも出荷できる、当然うまくいけばさらに品質を上 げることができる(※)

※ここで気をつけなくてはいけないのはグラフィッカーのモチベー ション管理である。最悪捨ててしまってもいいものに一生懸命になることはなかなか難しいし、せっかく作ったものは何としても入れて欲しいのが開発者であ る。ディレクター判断として「入れ込まない」選択をする必要に迫られた時には、そこはディレクターの采配としてはプロジェクト的に許容できるけれども開発 者としてはやるせない「大変遺憾ながら捨てざるをえない、ごめんね」っていうスタンスは崩してはならない。逆の立場なら一生懸命作ったものほど、きっと悲 しいはずだ。


実はこれはアジャイルという開発手法らしい。アジャイルをできるだけ簡単に説明すると、「小さい完成形を何度も作り上げながら大きな完成に持って行く」と説明できる。

次回はこのアジャイルについて少し話を進めたい。

ガンハウンドをつくろう1

まあそうやって、信用を失いつつも、なんとか3年はディレクションの仕事で食いつないだ。そこで契約が終了した

さあお金はないことはない。石橋くんは2年目に去っていった。金城くんもいなくなった。気がつけば一人ぼっちだったが嫁がいた。とりあえず次にどうするか計算してもらうと約半年はなんとか食べていけると社長であるお嫁さんはいう。勝負は半年である。

作りたいものはヴァルケンリスペクトのオリジナルヴァルケンである。新しいヴァルケンの新作をやってみたいし、自分好みに作ってみたい。15年越しの夢を叶える時が来た。過去にヴァルケンリスペクトのクローンをVIIプロジェクトとして作った時の反省点を思い出しながら、それで実現しなかったシステムを中心に、マップエディタなどツールや、ゲームのベースシステムを新規に組み上げた。ワークスで学んだMVC構造(※1)によるゲームの基本システムとシングルトンによるグローバルな変数の管理方法も取り込んでみた。そうやって、VIIからデータをインポートしてきて、まずガンヴァルケンを再現できる程度にまで基本システムを昇華した後、ここ3年でつらつら考えていた、レイノス2を自分好みにアレンジしたガンハウンドをテーマにした。

※1 MVC構造・・・・プログラムの設計上、動作と表示のプログラムを分けて設計すること。そうすることでいいことがいろいろある。例えばポーズメニュー。背景で戦闘画面を一時停止しながらポーズメニューを動かすことができる。分けていなかった場合、ポーズメニューを1フレーム進めてしまうとゲーム画面も一緒に進行してしまうため、ポーズにならない。VIIプロジェクトはポーズメニューで表示されるマップ画面で自機の位置をチカチカさせたかったがために後付けでMVCに対応できるよう大改造を行った末、対応しきれずプロジェクトごと終了せざるをえなくなった。恐ろしい。

ガンハウンドはWindowsで販売されることを想定してDirectXで作った。コンシューマとは違うが、携帯機であるPSPでヴァルケンをやりたい、という野望があったので、Winowsで開発するときから徹底的にPSPを意識した。たとえば画面の解像度は480x272、画像データはWindowsで耐えられるメモリに頼らず、PSPのメモリに乗り切るように、でかいBMPではなくて、細かく刻んだ昔ながらのグラフィックチップの羅列で創った。操作もPSPに無いボタンは使わない。ガンヴァルケンで破綻したポーズメニューはシステムとして最初から組み込んでおく、といった具合だ。なので、いつかチャンスが来た時に、DirectXの部分を最小限にしておいて、三角形ポリゴンを2枚書いて擬似スプライトにするところだけをPSP向けに移植すればいいようにグラフィックライブラリ部分とゲーム部分は徹底的に分けた。

さらに一通りDirectXで動かせるようになった後、コアのグラフィックライブラリ部分をOpenGLで描き直してみてその移植性を検証してみた。うまく動かないところはPSPでも苦労するところなのでこれも徹底的に直した。またPSPのプログラムはどちらかというとOPENGLよりなので、PSPにポーティング(移植)するときはこのOPENGL版が使えることに期待した(※)

※これは5年後にCocos2Dに移植するときに役に立った

暗礁に乗り上げて方向転換

横浜でのプログラム作業は終わることになってしまった。このために引っ越してきて立ち上げたオバキューだったがいきなり暗礁に乗り上げ た。しかしこのプロジェクトの継続を打ち切られる際、僕の結婚式に来てくれた関西ワークス本社の役員と、その時のプロジェクトリーダーが、この状況を救ってく れた。代わりにコンシューマゲームのプロジェクトを立ち上げ、外注を操るそのディレクションの仕事を用意してくれるという。アウトソーシングというやつら しい。とはいえ、その仕事が用意されているわけでも、どこかから降ってくるわけでもないので、仕事を作るところから一緒にやらせてくれることになる。石橋 くんにはネットワーク系のゲームライブラリのプログラム仕事をあてがってくれた。これはまた別の話としてどこかで書いていきたいが、最終的に信用を大きく 落として僕は仕事を失った。残念ながら手伝ってくれた石橋くんも巻き込んで担当から外れることになってしまった。関西での徹夜上等での作業や根性論という ものが全く機能しなかった。

少ない人数で無理やり作り出す小さいプロジェクトに必要な根性と信用は、大きなプロジェクトで部品になりきることができた後に 役に立つことはあるかもしれないが、部品にもなれないやつがすることではなかった。これは過去10年やってきた小規模開発(※2)しか見たことのなかった僕にとっては全く未知の世界で、プログラムができることと仕事ができることは全然別のことだと思い知った。

し かし、関西ワークス社のお仕事のつながりで新しい仕事に隙間なくつなげてもらえたことで月間110万円の売り上げだけは確保できた。なんとかこれをあと2年つないでいくことができれば「夢の自社タイトル」に挑戦することができる。あと2年、もう失敗は許されないところに来ていた。




ウサギさん・コンシューマソフトウェア

ワークスに一緒に出向に来ていたメンバーに関西のウサギさん・コンシューマソフトウェアという会社から来たメンバーが6人ほどいた。
実は僕の後輩の前職もこのウサギさんソ フ トだったんだけれども、この会社のすごいところは毎月の給与が3万円だったことである。たいていのメンバーは1年たらずでやめていくらしいが、2年勤めた 強力な(給与5万円の)先輩の圧政に苦しんで、みんな積極的に出向にでたがるらしい。このメンバ−6人には横浜での住居もあてがわれていたが2LDKの ウィークリーマンション1部屋に6人が突っ込まれていた。タコ部屋である。なんでも社長の借金がすごくてみんなで返しているらしい、関西での住処はルーム シェアらしかった。それでも技術はそれなりに高く、ハードウェア周りの知識もそれなりにありこの悪環境の中で知見を深めたことに驚かされる。 
 

こ の人たちの手取りを考えてみる。社会保険等はなく、個人で健康保険を払っていたらしい。交通費もなく家に帰れない状況で途方にくれて退職を決意した、と後 輩はいっていたのでおそらく交通費もない。勘定科目をどのような名目で計上していたか知らないが、おそらく原価は多くても5万円程度だろう。そうすると、 ウサギさんの粗利は55万円となる、すごい!6人来ているので1ヶ月に330万円の粗利!!!

半年続けると実に2000万円弱の利益にな る。せめて一人ずつ部屋を借りてやれよ・・・。一体どうやって技術者をだまくらかしてそんな会社を作り出せたのか社長にインタビューしてみたくなる。この 方法だと3ヶ月でオバキューの目的を達成できてしまう。しかし人はどんどん辞めていくが、逆に言うといなくなるので変なあとくされもない。これで労基署が活躍できてないことも不思議だが、こういうビジネスにはみなさんくれぐれもお気をつけください。この会社はまだあるよ。

 

ナウローディングのプログラマー3


横浜でのワークスのプログラム作業を3つ分請けて、それまでなんとか終電ペースで作り込みを追いつかせていた僕だったので、プロジェクトにおける信用は確実に石橋くんよりも稼いでいる自負はあったし、上下関係をつけるとしたら勝ったつもりでいた。しかし、このプロジェクトが末期に至った時立場は完全に逆転した。

デバッグのフェーズに入ると当然バグも3つ分出る。石橋くんはメインがナウローディングだけなのでほとんどバグらない。僕の忙しさにかまけて作り込みが甘かったプログラムはバグの出具合も半端なくバグの名産地と化していた。最終的に僕の担当になるバグシートが多すぎて手が回らなくなって追いつかなくなった。1つのバグに費やす時間が短くなり、その対応の精度の低さからまたバグが増える悪循環により僕は破綻していた。

そもそも僕がプログラムをたくさん受けるきっかけになったのは、ワークスのディレクターが「誰か作業を引き受けられる人はいませんか?」と言ってプログラム作業できる人を探してて片っ端から声をかけていたのに100人ほどもいる開発員の誰も手を上げないところに不義理を感じて、少々無理をして手を上げてしまったのが始まりだった。このとき勘違いしたのが、ディレクターはプログラム作業をできる人を探してはいたが、別に困っていたわけではなかったことである。

僕の貧乏性的な考え方では、この作業のために、また1人プログラマを雇うとすると、ワークスはさらに「60万円」かかってしまう、と考えた。しかし僕が頑張ることで60万円かけなくて済むのではないか、とも考えた。60万円は大金である。100円の寿司が6000皿も食べられる。1回に20皿食べるとすると300回お店に行ける。お嫁さんと2人で行くなら、1年間に3日に一度は回転ずしを食べに行ける、しかも2人で、凄い、60万円って凄い!

きっと感謝してもらえるはずだ、と思って快くいい顔をして、しかもいい声で返事した。しかし僕は破綻した。あと1人ワークスが60万円かけて人を雇っていたら破綻しなかった。僕は60万円という大金をディレクターに出させることを憂慮したが、この100人規模のプロジェクトにおける100万円がいかにちっぽけなものであるか、は最後に出来上がった説明書とスタッフロールの長さを見て充分に理解した。

少なくとも開発員だけでも100人いるということは、60万円x100人分の合計6000万円が「毎月」かかっているのである。それを1年続けることは少なくとも7億2000万円程度のプロジェクト予算は想像に難くない。さらに販売に関わる人や、宣伝に関わる人の人件費や、制作プロデューサーや、メインプログラマ(※1)の報酬は(外注契約で)毎月120万円以上と聞いた。さらに邪推すると社員の人月単価も60万円では済まないだろう。指紋認証とかそういうのがついてる立派なビルである。そう考えると少なくとも8億円以上かけて作られているプロジェクトの60万円っていうのは実に予算の0.075%に過ぎないことがわかった。3日に1度の回寿司を嫁と1年食べ放題に食べても全予算の0.1%未満なんである。



※1・・・メインプログラマー・・・過去にセガのバーチャなんとかっていう対戦格闘を作っていた3Dの第一人者。すごい人だった。口もすごい人だったが圧倒的な技術がそれを凌駕していた

愕然とした。60万円を得させてあげることなんかより、自分の与えられたプログラムをきっちり確実に終わらせることの重要性をはっきりと、痛いくらいに思い知った。0.1%未満の予算をケチって発売日を延ばしてしまうことの怖さ、8億円のゲームソフトの発売日を延ばして落胆させるユーザーの数、この仕事を発注したアメリカの会社から失うワークスの信用の重さに恐怖した。60万円が0.1%未満の予算になるようなプロジェクトが「ある」ことを知ってはいたが、実感したのは初めてだった。

結局、ナウローディングを専業で作っていた石橋くんが僕を見るに見かねて、バグ取りを手伝ってくれた。彼にも無理をさせていたら、この被害は吸収しきれず僕の失敗をリカバーしてくれる余裕はどこにもなかったと思う。ワークスのディレクターは100人規模の開発だけれども、一人一人の名前はもちろん、各担当の性格から技量などをよく覚えていて、それぞれをお昼ご飯に誘ったりして、実に人をよく見てプロジェクトを回すエリートタイプの人ゆえ、僕が落とした信用について、みのがせるほどずぼらな人ではなかった。


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