そもそもゲームを作る時の人件費は一般的にはだいたいどれくらいの費用がかかるものなのだろうか。
プログラマーを1ヶ月雇うとだいたい約60万円かかる。
グラフィッカーでも60万円。プランナーでも60万円。みんなだいたい60万円くらいかかる。プログラマとグラフィッカーとプランナーをそれぞれ1人、合計3人のプロジェクトを半年間進めると、つまるところ800万円もの投資が必要になる。
このうち1ヶ月は準備に費やされる。
プラットフォームの研究調査、たとえばDirectXの下調べやPS4などの新しいプラットフォームの研究、プランナーで言えば、ゲームの仕様書策定や元になるゲームの調査という名目のゲームプレイを行う。最後には、デバッグに1ヶ月使うと実質のゲームの開発に使えるのは、実に4ヶ月。
つまり800万円のうち360万円はゲームの準備と保守にかかる費用となる。昨今のゲーム制作や、スマホゲーならこの後に、「運営」というフェーズが発生してお客さんの動向に応じたバージョンアップやサーバーの拡大、縮小などにともなうプログラム修正などが発生する。
コンシューマーゲームにおいては概ねBD-ROMに焼きこまれたゲームのバグ修正とか、新規DLCの開発などが
これにあたるがスマホに比べると規模は違えども、割合は小さい。少なくともこの360万円という金額はどう考えてもかかる。自分で会社を起こして社員を雇えば必ずかかる費用なのである。
そもそも、なんで人を雇うと60万円なのか?細かい話はまた別の機会に書こうと思うが、少なくとも「他の会社なら60万円を稼ぐことのできる人材」にあたるからなのである。ゲームプログラマや、ゲームグラフィッカや、ゲームプランナーはよそから仕事をもらって仕事をすれば1人当たり60万円で計上できる相場がある。
もっとも人件費の60万円は60万円かかるから60万円という相場があるわけで、その会社なりの家賃や電気代や開発以外に消費する人件費(営業や経理や総務など)を考慮するともっとかかる場合もある。たとえば1ヶ月に1000万円の利益を出す会社の従業員が10人で構成されていたら1人あたり100万円稼ぐわけなんで、これを60万円で貸し出すのは損をする。そんな会社にプログラマを貸し出してもらおうとすると人月100万円という値段がつくわけだから、それを下回ると自分の会社の仕事をやっていたほうがマシである。
バンナムさんとかスクエニさんとかはそもそも人を貸し出すようなセコい商売はしないが、したとしてもそこの人材は高くつくはずだ。
逆に自宅を作業場所にして社長一人でプログラムを書いているゲーム会社にかかる経費は普段の生活費と変わらない。大きく見積もっても30万円程度だろう。そこは勘違いをしてはいけない。つまり原価30万円のものを相場に合わせて「60万円です!」って言い切ると「高っ」って思われて敬遠されるし、厚かましい。
プログラマやグラフィッカはともかく、社長という人はどのように計上すればいいんだろうか?
会社をつくってわかったが、プランナーや、プログラマー、グラフィッカというのは労働者である。
社長というのは経営者で便宜上労働をしてはいけないらしい。たとえば工場でおばさんと一緒にパンを袋に入れる仕事をしていて給与の振り込みができなかった、とかいう労働にかまけて給与の支払義務を怠るのが問題あるのだと思って、社員にはそう説明してきた。なので社長という人は経営をすることが仕事になるらしい。
この経営をする人のコストは、経営をしていることで消費される。もっというと経営をしていなくても消費される。
つまりいてもいなくてもいいけど報酬だけはちゃんと払って、税金と各種健康保険の支払いなどを滞り無く勧める義務と責任を果たしてね!という存在なのである。義務と責任さえ果たしておけば、まねきねこでもできるのである。
オバキューの場合はどうしたか?
実際には僕がプログラムをするので代表をお嫁さんに任せた。
さっき、まねきねこにもできるといったけど、あれはウソだ。お嫁さんの忙しさを目の当たりにした僕がそのままいうと、やったこともない経理をするために、簿記3級を取りに行ったり、市がやってる無料の会計士さんに会える日になんども足を運んだりしながら税金のことを学んでいた。会社で毎月3万円ほどを払えば会計士さんなり税理士さんがついてくれるので、お金がある人は、お嫁さんに負担をかけることはオススメしない。色々大変だ。
僕たちはこの3万円が大金だったこと、1年間で36万円もすることを考えるとボロい中古車なら1台変えてしまうこと、100円ずしなら年間3600皿も食べられることから、自分でやることを採択した。
あと会社の登記などの手続きも必要である。これらは最初だけだけど、だいたい20~25万円くらいかかる。
絶対に必要な登記費用だけでも15万円、その他、安い会社専用のハンコを作ったり諸費用に費やすのが5万程度かかると思っておけばいい。これも実は30万円くらいだせば全部やってくれるサービスも有る。
書面に必要なことを書くだけでハンコもセットで送ってくれるので便利だ。これは「くじらソフト」を立ち上げるときに使ったので間違いない。探せばすぐに出てくるので特に明記しないが「会社設立」とかでググってみてほしい。
僕たちは全部自力で大変だったけど、ものすごく色々な知識は身についたし、お嫁さんと苦楽をともにするのは僕は楽しかった。お嫁さんは緊張と未知の知識を得るのにだいぶ苦労したようで「もうしたくない」といってた。
本当に苦労をかけて申し訳ないが、くじらソフト時代に、さらにもう1つ会社を立ち上げる必要がでてきてまた苦労をかけてしまったが。
話を元に戻そう。
1ヶ月に60万円稼ぐ、となるとそれなりに経費がかさんでいて、それで損も得もしない金額が60万円というのが相場なので僕が「オバキューでっす!さっきたちあげましたけど60万円です、借家でやってます」となると、それはそれで厚かましいし、なにか問題があった時に、立ち上がったばっかりの会社にはなんの保証もできない。もし、僕が病気で倒れた時のバックアップが嫁とまねきねこしかいない会社と、100人規模の会社でバックアップが99人いる会社で、どっちに60万円払うか問われたら、前者を選ぶ人はいない。
なので僕は以前属していたシステムクラスタを訪ねて、僕が倒れた時の保証を月5万円で請け負うことにしてもらった。つまり、他所の会社から60万円で仕事を請け負い、5万円を保証料としてクラスタにとってもらい、僕は55万円を受け取って、よその会社にシステムクラスタから「出向」という形で事実上の派遣をしてもらうことができるようになった。
仲介手数料が5万円というのは安い。僕が少なくとも1年うまく働けてやっと1ヶ月分(=60万円)たまる金額なので、僕が倒れた時に1ヶ月だけ保証が可能な金額である。それ以外はリスクでしかない。システムクラスタとは長い付き合いなので、そこのリスクを排除して考えてくれた、いわば祝儀みたいなもので送り出してくれたことになる。
同じ条件で、古い知り合いと2人でシステムクラスタを通じて関東にある(株)ワークスという100人規模のゲーム会社に2人で出向に行くことにした。2人で同じ目標である「コンシューマゲームを自社ブランドで出す」という、目標を決めてかかることができたのが幸いだった。自分の取り分は変わらないが、会社の貯金が増える速さが2倍になる。
給与は総額35万円で設定すれば、税金、社保その他を引かれて、手取り28万くらいになる。
会社が払う総額としては、社保の半額を負担する必要があるので、結局1人あたり40万円くらいの出費となる。つまり前述した55万円のうち15万円は会社に貯金できる。2人だと30万円だ。これを1年繰り返せば、360万円たまる。ただし、ここに法人税という税金がかかってくるのでこの利益の実に40%程度を持っていかれることを覚悟しておいてほしい。
つまり144万円ほどが法人税の対象になる。法人税とは会社用の所得税みたいなもので利益に応じて料率が変わる税金である。上限で40%くらいなので実際にはもう少しインパクトは弱いが半分近くが国に持っていかれるのである。まあ、でも、これは憂いてもしょうがない。日本で仕事をする以上、この治安で、この市場で、この豊かさを享受するならやむを得ない。しかし、国がセーフティネットや、中小企業支援で捻出している費用を不正受給している人たちのことを初めて本気で憎らしく思ったのもこの納税額を知った瞬間だった。
ゲームを創るために1000万程度を貯金しようと思うとこれを最低でも2年半は続ける必要がありそうだし、実際これを3年続けてみた経緯と結果をおって報告していこうと思います。
プログラマーを1ヶ月雇うとだいたい約60万円かかる。
グラフィッカーでも60万円。プランナーでも60万円。みんなだいたい60万円くらいかかる。プログラマとグラフィッカーとプランナーをそれぞれ1人、合計3人のプロジェクトを半年間進めると、つまるところ800万円もの投資が必要になる。
このうち1ヶ月は準備に費やされる。
プラットフォームの研究調査、たとえばDirectXの下調べやPS4などの新しいプラットフォームの研究、プランナーで言えば、ゲームの仕様書策定や元になるゲームの調査という名目のゲームプレイを行う。最後には、デバッグに1ヶ月使うと実質のゲームの開発に使えるのは、実に4ヶ月。
つまり800万円のうち360万円はゲームの準備と保守にかかる費用となる。昨今のゲーム制作や、スマホゲーならこの後に、「運営」というフェーズが発生してお客さんの動向に応じたバージョンアップやサーバーの拡大、縮小などにともなうプログラム修正などが発生する。
コンシューマーゲームにおいては概ねBD-ROMに焼きこまれたゲームのバグ修正とか、新規DLCの開発などが
これにあたるがスマホに比べると規模は違えども、割合は小さい。少なくともこの360万円という金額はどう考えてもかかる。自分で会社を起こして社員を雇えば必ずかかる費用なのである。
そもそも、なんで人を雇うと60万円なのか?細かい話はまた別の機会に書こうと思うが、少なくとも「他の会社なら60万円を稼ぐことのできる人材」にあたるからなのである。ゲームプログラマや、ゲームグラフィッカや、ゲームプランナーはよそから仕事をもらって仕事をすれば1人当たり60万円で計上できる相場がある。
もっとも人件費の60万円は60万円かかるから60万円という相場があるわけで、その会社なりの家賃や電気代や開発以外に消費する人件費(営業や経理や総務など)を考慮するともっとかかる場合もある。たとえば1ヶ月に1000万円の利益を出す会社の従業員が10人で構成されていたら1人あたり100万円稼ぐわけなんで、これを60万円で貸し出すのは損をする。そんな会社にプログラマを貸し出してもらおうとすると人月100万円という値段がつくわけだから、それを下回ると自分の会社の仕事をやっていたほうがマシである。
バンナムさんとかスクエニさんとかはそもそも人を貸し出すようなセコい商売はしないが、したとしてもそこの人材は高くつくはずだ。
逆に自宅を作業場所にして社長一人でプログラムを書いているゲーム会社にかかる経費は普段の生活費と変わらない。大きく見積もっても30万円程度だろう。そこは勘違いをしてはいけない。つまり原価30万円のものを相場に合わせて「60万円です!」って言い切ると「高っ」って思われて敬遠されるし、厚かましい。
プログラマやグラフィッカはともかく、社長という人はどのように計上すればいいんだろうか?
会社をつくってわかったが、プランナーや、プログラマー、グラフィッカというのは労働者である。
社長というのは経営者で便宜上労働をしてはいけないらしい。たとえば工場でおばさんと一緒にパンを袋に入れる仕事をしていて給与の振り込みができなかった、とかいう労働にかまけて給与の支払義務を怠るのが問題あるのだと思って、社員にはそう説明してきた。なので社長という人は経営をすることが仕事になるらしい。
この経営をする人のコストは、経営をしていることで消費される。もっというと経営をしていなくても消費される。
つまりいてもいなくてもいいけど報酬だけはちゃんと払って、税金と各種健康保険の支払いなどを滞り無く勧める義務と責任を果たしてね!という存在なのである。義務と責任さえ果たしておけば、まねきねこでもできるのである。
オバキューの場合はどうしたか?
実際には僕がプログラムをするので代表をお嫁さんに任せた。
さっき、まねきねこにもできるといったけど、あれはウソだ。お嫁さんの忙しさを目の当たりにした僕がそのままいうと、やったこともない経理をするために、簿記3級を取りに行ったり、市がやってる無料の会計士さんに会える日になんども足を運んだりしながら税金のことを学んでいた。会社で毎月3万円ほどを払えば会計士さんなり税理士さんがついてくれるので、お金がある人は、お嫁さんに負担をかけることはオススメしない。色々大変だ。
僕たちはこの3万円が大金だったこと、1年間で36万円もすることを考えるとボロい中古車なら1台変えてしまうこと、100円ずしなら年間3600皿も食べられることから、自分でやることを採択した。
あと会社の登記などの手続きも必要である。これらは最初だけだけど、だいたい20~25万円くらいかかる。
絶対に必要な登記費用だけでも15万円、その他、安い会社専用のハンコを作ったり諸費用に費やすのが5万程度かかると思っておけばいい。これも実は30万円くらいだせば全部やってくれるサービスも有る。
書面に必要なことを書くだけでハンコもセットで送ってくれるので便利だ。これは「くじらソフト」を立ち上げるときに使ったので間違いない。探せばすぐに出てくるので特に明記しないが「会社設立」とかでググってみてほしい。
僕たちは全部自力で大変だったけど、ものすごく色々な知識は身についたし、お嫁さんと苦楽をともにするのは僕は楽しかった。お嫁さんは緊張と未知の知識を得るのにだいぶ苦労したようで「もうしたくない」といってた。
本当に苦労をかけて申し訳ないが、くじらソフト時代に、さらにもう1つ会社を立ち上げる必要がでてきてまた苦労をかけてしまったが。
話を元に戻そう。
1ヶ月に60万円稼ぐ、となるとそれなりに経費がかさんでいて、それで損も得もしない金額が60万円というのが相場なので僕が「オバキューでっす!さっきたちあげましたけど60万円です、借家でやってます」となると、それはそれで厚かましいし、なにか問題があった時に、立ち上がったばっかりの会社にはなんの保証もできない。もし、僕が病気で倒れた時のバックアップが嫁とまねきねこしかいない会社と、100人規模の会社でバックアップが99人いる会社で、どっちに60万円払うか問われたら、前者を選ぶ人はいない。
なので僕は以前属していたシステムクラスタを訪ねて、僕が倒れた時の保証を月5万円で請け負うことにしてもらった。つまり、他所の会社から60万円で仕事を請け負い、5万円を保証料としてクラスタにとってもらい、僕は55万円を受け取って、よその会社にシステムクラスタから「出向」という形で事実上の派遣をしてもらうことができるようになった。
仲介手数料が5万円というのは安い。僕が少なくとも1年うまく働けてやっと1ヶ月分(=60万円)たまる金額なので、僕が倒れた時に1ヶ月だけ保証が可能な金額である。それ以外はリスクでしかない。システムクラスタとは長い付き合いなので、そこのリスクを排除して考えてくれた、いわば祝儀みたいなもので送り出してくれたことになる。
同じ条件で、古い知り合いと2人でシステムクラスタを通じて関東にある(株)ワークスという100人規模のゲーム会社に2人で出向に行くことにした。2人で同じ目標である「コンシューマゲームを自社ブランドで出す」という、目標を決めてかかることができたのが幸いだった。自分の取り分は変わらないが、会社の貯金が増える速さが2倍になる。
給与は総額35万円で設定すれば、税金、社保その他を引かれて、手取り28万くらいになる。
会社が払う総額としては、社保の半額を負担する必要があるので、結局1人あたり40万円くらいの出費となる。つまり前述した55万円のうち15万円は会社に貯金できる。2人だと30万円だ。これを1年繰り返せば、360万円たまる。ただし、ここに法人税という税金がかかってくるのでこの利益の実に40%程度を持っていかれることを覚悟しておいてほしい。
つまり144万円ほどが法人税の対象になる。法人税とは会社用の所得税みたいなもので利益に応じて料率が変わる税金である。上限で40%くらいなので実際にはもう少しインパクトは弱いが半分近くが国に持っていかれるのである。まあ、でも、これは憂いてもしょうがない。日本で仕事をする以上、この治安で、この市場で、この豊かさを享受するならやむを得ない。しかし、国がセーフティネットや、中小企業支援で捻出している費用を不正受給している人たちのことを初めて本気で憎らしく思ったのもこの納税額を知った瞬間だった。
ゲームを創るために1000万程度を貯金しようと思うとこれを最低でも2年半は続ける必要がありそうだし、実際これを3年続けてみた経緯と結果をおって報告していこうと思います。